アメリカのサンフランシスコで産まれる。
３歳で日本に帰国する時点で、小さな彼女は大切なことをもうたくさん知っていた。例えば、一人で遊べたし、歌だって歌えた。
彼女がその時知らなかったことと言えば、アメリカから日本に帰国する時に乗った飛行機は、それから彼女の人生において乗る数知れない飛行機のたった最初の一機に過ぎなかったことだ。
それから彼女はインドネシア、シンガポール、アメリカ、日本に住むことになる。
そして彼女はまた飛行機に乗ってドイツへやってきた。
しかし彼女にとってドイツは全くの別世界だった。
今はドイツ語で「こんにちは」だって言えるし、「愛してる」とも言える。
ただ、「私はあまりスポーツが好きじゃなくて、アウトドア派でもないけど、なぜかヨガとピラテスにはハマってます。夜、眠りに付く前にベッドの中で読書するひとときが何よりも好き。東京に帰りたいと思うこともたまにあるけど・・・ま、しょうがない。」なんてことはまだ言えない。
いつか、と彼女は考える。いつか必ずそんなこともドイツ語で言えるようになってみせる。それまでは笑顔を絶やさずのんびりと頑張っていこう。
